日本最古の岩石

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美濃帯上麻生礫岩中花崗片麻岩礫


上麻生礫岩: 名古屋大学博物館蔵

CHIME法によって明らかにされた新事実の中で,日本列島の誕生と大きく関わる注目すべきことは,20.5億年の年齢を持つ日本最古の岩石(片麻岩)中にさらに10億年も古い30.5億年前,あるいは35.6億年前のジルコン粒子が含まれている点です.

上麻生礫岩中の花崗片麻岩(花崗岩が変成した岩石)は,約20.5億年前に固結した花崗岩が17.5億年前に変成作用を受けたものです(Shibata and Adachi, 1974).日本列島で見つかったもっとも古い岩石として知られています.

花崗岩中に入っているジルコンの形態を詳しく観察すると,結晶面や稜が明瞭な粒子(左)と,良く円磨された粒子(右)があります.ジルコンは固くて安定な鉱物ですから,変成作用で簡単に丸くなることはありません.この円磨粒子は,原岩となった花崗岩が20.5億年前に固結するときに,周囲の岩石から取り込んだものと考えられます.したがって,丸いジルコン粒子は20.5億年よりもっと古い年代を持つことが期待されますので,CHIME法で測定してみました.

日本最古の岩石中の円磨されたジルコン粒子は,30.5億年とか35.6億年という古い年代を持っていました.このような年代の岩石は,世界的に見てもクラトンと呼ばれる安定大陸地域からしか報告されておりません.東アジアのクラトンでは,30億年を越える岩石は極めて稀にしか見つかっておりません.この研究によって,従来の日本列島や東アジアの地質学的な歴史は,新しい観点から再検討せざるを得なくなりました.

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